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三酔人経綸問答より学ぶ!東洋のルソーが説く友好重視の姿勢について!

中江兆民は、明治時代の思想家、ジャーナリスト、政治家であり、フランスの思想家ジャン=ジャック・ルソーを日本へ紹介して自由民権運動の理論的指導者となった事で知られ、東洋のルソーと評された人物です。
そんな兆民が記した『三酔人経綸問答』は、3人の男が酒を飲みながら日本の針路について議論する話。
・西洋近代思想を理想主義的に代弁する洋学紳士
膨張主義的国権主義思想を説く壮士風の豪傑君
・これを迎える現実主義的な民権拡張論者の南海先生
の三者の問答形式で,日本がいかにあるべきかを論じたもので、近代の日本の政治・軍事・社会・文化の根本問題が浮き彫りにされていますが、実は隣国との歴史問題、領土問題で対立を深めつつある現代にも通じる内容で、今後の日本の方向性を考えるヒントとなる著書です。

ざっとその内容を整理してみます。

【洋学紳士の主張】
・民主制の確立、軍縮・平和主義の理想を主張する、非武装民主立国論者。
・役に立たない軍備の撤廃=完全非武装の提唱。急な軍拡は経済を破綻させるため、他国への侵略の意思が無いことを示す方がいい。
・世界の国々が民主制を採用することにより戦争が起こらない状態が作れると論じる。
・政治的進化の信奉者である紳士は、人類が最後に到達する最高の政治形態である民主共和制の採用を主張する。
・世界平和の実現と各国における民主共和制の採用、国際連盟の提唱(兆民は世界国家論)。
・日本への侵略に対しては、非暴力・無抵抗に徹する(絶対平和主義の立場)。国家の防衛は道義に適うか。「防衛中の攻撃」も悪である。
・もし非武装につけ込んで、凶暴な国がわが国に侵攻したらという問いに対し、まずは説得して、それがダメなら弾に当たって死ぬだけの覚悟を持とうと呼びかけている。
・結果、日本が国として滅びても(世界市民主義の立場)、後世のための一つの先例となればいいと主張。

【豪傑君の主張】
・近代史の前例を踏まえた力の行使を主張する、対外戦争論者。
・現実に戦争が存在する以上、軍事強化が大切。しかし急激な軍事大国化は不可能。
・内政において守旧派と改革派の対立が不可避である現実を踏まえている。
・対外戦争によって国論をまとめ発展させ、守旧派の一掃をはかろうと考える。
・力による抑止力を重視し、軍事大国化と日本の文明化の自覚を喚起する。

【南海先生の主張】
・洋学紳士の理想と豪傑君の力を折衷した平和的友好関係の樹立への努力を主張する、現実主義者。
・紳士の考えは未来のユートピア、豪傑君の考えは過去の戦略で、双方とも現在に役に立たない。
・両者とも国際社会を弱肉強食の世界として固定化するが、国際社会のニ面性(パワ―・ポリティックスと国際法の拡大)とその可変性への注目が大切。
・日本への侵略に対しては、国民的総抵抗で対処する(ナショナリズムの意識)。ゲリラ戦と民兵制の採用。
・世界各国との平和友好関係の樹立への努力と大幅な軍縮
・列強諸国の勢力均衡を前提として、日本は必要な軍備で自衛し、決して外に打って出るべきではない。
・一方の国が不安定で神経質になると、もう一方の国も不安定になる「安全保障のジレンマ」がおきてしまう。
・「安全保障のジレンマ」に陥る愚を避け、諸国と友好関係を築いていくべきである。

参考:中江兆民の『三酔人経綸問答』

以上のように、著書の中では、
・民主主義者である洋学紳士は自由・平等・博愛の大義による徹底した民主化と非武装平和論を説き、
・侵略主義者の豪傑君は軍備拡張と大陸侵略とそれをてこにした国内改革による国権の確立を主張し、
・現実主義者の南海先生は、対外的には平和外交と防衛本位の国民軍構想を、国内的には「恩賜の民権」から「回復の民権」へ、「立憲制」から「民主制」への漸進的改革を
唱えました。
こうしたことから兆民の思想は、国内外の歴史的条件を俯瞰した上での実践的な選択を採る南海先生の議論に沿いながらも、近代文明の基本理念を堅持し歴史進化の理法を確信する洋学紳士の主張と、帝国主義化する西洋諸列強の現実に即応する豪傑君の主張を並べることで、『三酔人経綸問答』を日本の近代化過程全般を見通しうる政治理論書として纏め上げていったのです。

今年は今年は第一次世界大戦から101年目で、敗戦から70年という節目の時期にあたります。
※)このあたりのことは、”歴史や古典から学ぶこと!100年前・69年前から日本の未来を見据えてみよう!”も参考にしてみてください。
こうした時期にあたり、私達は改めて歴史から学び、冷静な事実の判断力が求められます。

ネットやメディアからの安易で一方的な情報だけに惑わされて隣国をただ敵視するのではなく、多様な議論と相手への理解を元に、相互の立場のバランスを考慮した協調の道を辿っていきたいものですね。

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