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知命立命 心地よい風景

This is Kiyonori Shutou's weblog

【源氏物語】 (佰陸拾肆) 夕霧 第七章 雲居雁の物語 夕霧の妻たちの物語

紫式部の著した『源氏物語』は、100万文字・22万文節・54帖(400字詰め原稿用紙で約2400枚)から成り、70年余りの時間の中でおよそ500名近くの人物の出来事が描かれた長編で、800首弱の和歌を含む平安時代中期に成立した典型的な長編王朝物語です。
物語としての虚構の秀逸、心理描写の巧みさ、筋立ての巧緻、あるいはその文章の美と美意識の鋭さなどから、しばしば「古典の中の古典」と称賛され、日本文学史上最高の傑作とされています。
物語は、母系制が色濃い平安朝中期(概ね10世紀頃)を舞台に、天皇親王として出生し、才能・容姿ともにめぐまれながら臣籍降下して源氏姓となった光源氏の栄華と苦悩の人生、およびその子孫らの人生が描かれているのです。

そんな今回は、「夕霧」の物語の続きです。
a href=”http://ift.tt/1GXXqOp; target=”_blank”>【源氏物語】 (佰弐拾) 第二部 はじめ 光源氏の後半生と、源氏をとりまく子女の恋愛模様!

第七章 雲居雁の物語 夕霧の妻たちの物語
 [第一段 雲居雁、実家へ帰る]
 このように無理して馴染んだ顔をしていらっしゃるので、三条殿は、
 「これが最後のようだと、まさかそんなことはあるまいと、一方では信頼していたが、実直な人が浮気したら跡形もなくなると聞いていたことは、本当のことであった」
 と、夫婦の仲を見届けてしまった感じがして、「どうにしてこの侮辱を味わっていようか」とお思いになったので、大殿邸へ、方違えしようと思って、お移りになったところ、弘徽殿の女御が里にいらっしゃる時でもあり、お会いなさって、少し悩みが晴れることとお思いになって、いつものように急いでお帰りにならない。
 大将殿もお聞きになって、
 「やはりそうであったか。まことせかっちでいらっしゃる性格だ。この大殿の方も、また、年輩者らしくゆったりと落ち着いているところが、何といってもなく、実に性急で派手でいらっしゃる方々だから、気にくわない、見るものか、聞くものかなどと、不都合なことをおっしゃり出すかも知れない」
 と、驚きなさって、三条殿にお帰りになると、子供たちも、半ばは残っていらっしゃって、姫君たちと、それからとても幼い子は連れていらっしゃっていたのだが、見つけて喜んで纏わりつき、ある者は母上を恋い慕い申して、悲しんで泣いていらっしゃるのを、かわいそうにとお思いになる。
 手紙を頻繁に差し上げて、お迎えに参上なさるが、お返事すらない。このように頑固で軽率な夫婦仲だと、嫌に思われなさるが、大殿が見たり聞いたりなさる手前もあるので、日が暮れてから、自分自身で参上なさった。

 [第二段 夕霧、雲居雁の実家へ行く]
 寝殿にいらっしゃると聞いて、いつもお帰りの時に使う部屋は、年配の女房たちだけが控えている。若君たちは、乳母と一緒にいらっしゃった。
 「今になって若々しいお付き合いをなさることだ。このような子を、あちらやこちらにほって置きなさって。どうして寝殿でお話に熱中なさっているのですか。不似合いなご性格とは、長年見知っていたが、前世からの宿縁だろうか、昔から忘れられない人とお思い申し上げて、今ではこのように、手のかかった子供たちも大勢かわいくなっているのを、お互いに見捨ててよいものかと、お頼み申しているのです。ちょっとしたことで、こんなふうになさってよいものでしょうか」
 と、ひどく非難しお恨み申し上げなさると、
 「何もかも、もう飽き飽きしたと見限られてしまった身ですので、今さらまた、直るものでないのを、どうして直そうかと思いまして。見苦しい子供たちは、お忘れにならなければ、嬉しく思いましょう」
 とお答え申し上げなさった。
 「穏やかなお返事ですね。言い続けていったら、誰が悪く言われるでしょう」
 と言って、無理にお帰りになりなさいとも言わずに、その夜は独りでお寝みになった。
 「変に中途半端なこのごろだ」と思いながら、子供たちを前にお寝せになって、あちらではまた、どんなにお悩みになっていらっしゃるだろう様子を、ご想像申し上げ、気の安まらない心地なので、「どのような人が、このようなことを興味もつのだろう」などと、懲り懲りした感じがなさる。
 夜が明けたので、
 「誰が見聞きしても大人げないことですから、もう最後だとおっしゃるならば、そのようにしましょう。あちらにいる子供たちも、かわいらしそうに恋い慕い申しているようでしたが、選び残されたのには、何かわけがあるのかと思いながら、放っておくことができませんから、どうなりともいたしましょう」
 と、脅し申し上げなさると、いかにもきっぱりしたご性格なので、この子供たちまで、知らない所へお連れなさるのだろうか、と心配になる。姫君を、
 「さあ、いらっしゃい。お目にかかるために、このように参上するのも体裁が悪いので、いつも参上できません。あちらにも子供たちがかわいいので、せめて同じ所でお世話申そう」
 と申し上げなさる。まだとても小さく、かわいらしくいらっしゃるのを、しみじみといとしいと拝見なさって、
 「母君のお言葉にお従いになってはなりませんよ。とても情けなく、物事の分別がつかないのは、とても良くないことです」
 と、お教え申し上げなさる。

 [第三段 蔵人少将、落葉宮邸へ使者]
 大殿は、このようなことをお聞きになって、物笑いになることとお嘆きになる。
 「もう少しの間、そのまま様子を見ていらっしゃらないで。自然と反省するところも生じてこようものを。女がこのように性急であるのも、かえって軽く思われるものだ。仕方ない、このように言い出したからには、どうして間抜け顔をして、おめおめとお帰りになれよう。自然と相手の様子や考えが分かるだろう」
 と仰せになって、この一条宮邸に、蔵人少将の君をお使いとして差し向けなさる。
 「前世からの因縁があってか、あなたのことを
  お気の毒にと思う一方で、恨めしい方だと聞いております
 やはり、お忘れにはなれないでしょう」
 とあるお手紙を、少将が持っていらっしゃって、ただずんずんとお入りになる。
 南面の簀子に円座をさし出したが、女房たちは、応対申し上げにくい。宮は、それ以上に困ったことだとお思いになる。
 この君は、兄弟の中でとても器量がよく、難のない態度で、ゆったりと見渡して、昔を思い出している様子である。
 「参上し馴れた気がして、久しぶりの感じもしませんが、そのようにはお認めいただけないでしょうか」
 などとだけそれとなくおっしゃる。お返事はとても申し上げにくくて、
 「わたしはとても書くことできない」
 とおっしゃるので、
 「お気持ちも通じず子供っぽいように思われます。代筆のお返事は、差し上げるべきではありません」
 と寄ってたかって申し上げるので、何より先涙がこぼれて、
 「亡くなった母上が生きていらっしゃったら、どんなに気にくわない、とお思いになりながらも、罪を庇ってくれたであろうに」
 とお思い出しなさると、涙ばかりが辛さに先走る気がして、お書きになれない。
 「どういうわけで、世の中で人数にも入らないわたしのような身を
  辛いとも思い愛しいともお聞きになるのでしょう」
 とだけ、お心にうかんだままに、終わりまで書かなかったような書きぶりで、ざっと包んでお出しになった。少将は、女房と話して、
 「時々お伺いしますのに、このような御簾の前では、頼りない気がいたしますが、今からは御縁のある気がして、常に参上しましょう。御簾の中にもお許しいただけそうな、長年の忠勤の結果が現れましたような気がいたします」
 などと、思わせぶりな態度を見せてお帰りになった。

 [第四段 藤典侍雲居雁を慰める]
 ますますおもしろからぬご気分に、気もそぞろにうろうろなさっているうちに、大殿邸にいる女君は、何日も経るうちに、お悲しみ嘆くことしばしばである。藤典侍は、このようなことを聞くと、
 「わたしを長年ずっと許さないとおっしゃっていたと聞いているが、このように馬鹿にできない相手が現れたこと」
 と思って、手紙などは時々差し上げていたので、お見舞い申し上げた。
 「わたしが人数にも入る女でしたら夫婦仲の悲しみを思い知られましょうが
  あなたのために涙で袖をぬらしております」
 何となく出過ぎた手紙だとは御覧になったが、何となくしみじみと物思いに沈んでいる時の所在なさに、「あの人もとても平気ではいられまい」とお思いになる気にも、幾分おなりになった。
 「他人の夫婦仲の辛さをかわいそうにと思って見てきたが
  わが身のこととまでは思いませんでした」
 とだけあるのを、お思いになったままだと、しみじみと見る。
 あの、昔、二人のお仲が遠ざけられていた期間は、この典侍だけを、密かにお目をかけていらっしゃったのだが、事情が変わってから後は、とてもたまさかに、冷たくおなりになるばかりであったが、そうは言っても、子供たちは大勢になったのであった。
 こちらがお生みになったのは、太郎君、三郎君、五郎君、六郎君、中の君、四の君、五の君といらっしゃる。藤典侍は、大君、三の君、六の君、二郎君、四郎君といらっしゃった。全部で十二人の中で、出来の悪い子供はなく、とてもかわいらしく、それぞれに大きくおなりになっていた。
 藤典侍のお生みになった子供は、特に器量がよく、才気が見えて、みな立派であった。三の君と、二郎君は、六条院の東の御殿で、特別に引き取ってお世話申していらっしゃる。院も日頃御覧になって、とてもかわいがっていらっしゃる。
 このお二方の話は、いろいろとあって語り尽くせない、とのことである。

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